* 君の休日
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アスラン・ザラは午後の日差しの中、緑の風そよぐカフェテラスの一角で独り読書に耽け、いつ運ばれたのか判らない紅茶はすっかり香りを失っていた
人と付き合うのがあまり上手とは言えない俺はこうして独りで居る事が多かった
「アスラン」
ひょっこり現れた同じ藍色の髪の君は長い髪から甘い香りが靡いかせて、制服の時もそうだが、私服で詰襟がない服を着ていると髪では隠しきれない赤い印が白い首元に浮き立つそればかりに気になって、昨日も君は彼の胸の中で眠ったのかと考えてしまうよ
「何してるんですか?」
「別に……」
口数は少ない俺に"優しい空気、すべてを包み込んでくれるような瞳が好き"と言い君は向かいの開いた席にちょこんと腰をおろしたね
「君こそ、どうした?」
久しぶりのプラント帰航、そして休日。イザークから逃げてきたのか?
「うーーん、散歩」
その笑顔、その声、その姿、イザークに刻まれたその首の印さえなければ…
店員に注文する横顔に邪まな想いを馳せた
一瞬過ぎった邪まな想いに顔を赤らめ、読みかけの本がするりと手元から落ちる
拾い上げようと伸ばした手に君の白く思いの外ひんやりとした手が重なった時、嬉しかったんだ
「あっ…ごめん……」
でも、初心な少女のように俺は手を咄嗟に引っ込めてしまったよね
君はそんな俺に気づかず、無邪気に笑い本を拾い上げてくれたね
「ねぇ、アスラン。お願いがあるんだけど…」
「あぁ何だ?」
「お金貸して!」
「は?!!!」
唐突なお願いだ。両手を合わせ瞳を閉じて懇願している君はどうも本気でお金を貸して欲しいらしい。理由を聞けば普通の女の子のお願い事で、それは彼氏に頼めば済む事なのに何故、俺に借金までして君は自分で手に入れたかったのかな?
「あのね、あそこの角のお店に飾ってある赤いペンダント、どうしても欲しいの!でも、手持ちが足りなくて…給料日まで此処に居れないし……だからお願いします!」
くすりと俺が笑うのを、合わせた手の脇からちらっと真紅の瞳を片方だけ覗かせる君はとてもMSのエースパイロットとは思えないよ
「いいよ、プレゼントしてあげるよ」
「本当に?いいの??」
「あぁ、いいよ。でもイザークには内緒だぞ」
俺の負けだ。君のような子にお願いされて断れる男がいるものか
そして、嬉しそうにはしゃぐその笑顔を見せられたら、その首に見え隠れする印の意味など忘れて勘違いしそうになるよ
「貴様、何をしている…」
「っ痛!………何って…お茶を………」
「俺の誘いは断っておいて、この腑抜けとはお茶出来るのか!貴様は!!」
学生の頃はあんなに強気で負かしていた君なのに、上官ともなると口答えはまずいと見える。そうして大人になっていくんだろうな、君も…
「イザーク、もういいだろ。別に休みに誰と何をしようと自由じゃないか。腕を離してやれ」
「き、貴様!俺に命令するな!民間人がぁ!!」
「命令じゃない…俺はただ……」
イザークの気迫に周囲が一気に凍りつく
感情剥き出しでいつもつっかかってくるイザークが俺は羨まく思う事があったと彼が知ったらどう思うかな?
いつも俺は迷って大事な事を言えず後悔してばかり
君の事も後悔してるよ
「腑抜けと一緒居ると腑抜けが移るぞ!来い!!」
「あ、はい………アスラン、約束よ!絶対だからね!」
子猫のようにイザークに引っ張られていく同じ髪色の君にふと想ったんだ
母も父も死んでしまった今、君がもし兄妹だったらどんなに嬉しいか
君もそう想ってくれるかな?
アスラン・ザラ様
その後、お元気ですか?
どこで何をしていますか?
せっかくプレゼントしてくれたペンダント
隊長に取り上げられました…ごめんなさい
絶対何が何でも取り返しますから!!
またお茶しましょうね
久しぶりに穏やかな時間を過ごせて嬉しかったです
今度は銀髪の悪魔の来ないところでゆっくりと
あと、ふと馬鹿な事思ったんですよ
アスランみたいなお兄様いたら嬉しいなって
本当、馬鹿だと笑ってください
悪魔のような隊長の下にいるとアスランのような
穏やかな人は貴重で大切なのです
では、またメールします
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雀達様のリクエストにお応えしたモノです
アスランと連載"The future of doll"ヒロインのささやかだけれど優しい思い出を"
何か違うような気もしますが、ご期待に添えたでしょうか?
もし、違っていたらスイマセン…
見放さないで下さい…懲りずにリクエストくださいませ……
//Al Sa'd al Su'ud//Master;神威
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