* MADONNA LILY



激情の人だと聞いていた
憧れる人は多かったが、皆遠巻きに見るだけで
誰も相手にされないと思っていた

だけど、振り向いてくれた…私に……


[あの子でしょ?ジュール様がご執心の子]
[パッとしないわね…]
[どこが良いのかしらね?あんな子の…]

居心地悪い…
言われなくたってわかってるよ…
そんなことぐらい


独り屋上で肢体を投げ出し、瞳を閉じると柔らかい日差しに包まれながらも渦巻く嫉妬、批判の心無い声がの耳から離れなかった

「ん゛ーーーー、煩い煩い煩い!!!」

透き通るような白い両の手で耳を塞ぎ、左右にふられる頭に合わせて流れる髪は黒だったが、その内の赤みが光を反射し、キラキラと眩い光を暗く沈んだ空気を一掃し、イザークから強引に身につけるように渡されたマリナドブルボンのマドンナリリィの香りが辺り一面にやわらかく広がった
それはまるで、傷ついた心をそっと優しく包み込むように
今思えば、この香りさえもイザークが離れていても私を包んでいられるようにと私の為に選び抜かれたモノだったのに、そんな事にすら気づかずに愚かな妄執に取り付かれていた


「何やってるんだよ、こんなところで」
「ディアッカ・・・」
「イザークがちゃんが見つからないって騒いでるぜ?」
「もしかして、ここ教えちゃった!!???」
「教えてたら俺が来る訳ないでしょ」

それはそうだ・・・
イザークが知っていたら、そこら中に響き渡るような怒鳴り声でやってくるはずだ

「はぁ・・・ねぇ、ディアッカ、イザークはなんで私を選んだんだろ?」
「あ?俺が知るかよ、そんな事…」

褐色の肌に栄えるゴールドの髪をかきながら、紫水晶のような瞳は困惑していた

「イザークならいくらでも眉目秀麗な人沢山居るでしょ?」
「またそんな事言ってんの?お前なぁ…あぁー女って本当面倒くせーよな。そういうとこ。イザークに直接聞きゃ済む話じゃん」
「っ!…そうだけど……」

男っぽい人なのに、どうしてかすごく綺麗で、それでいて優秀で、しかも家柄もすごい
そんな人と普通の自分がつり合うわけがない
イザークが選んだんだから…と言われても自信の欠片も持てるはずもなく、出るのはため息ばかり

「外野にアレだけ騒がれたら、いくらでも女々しくもなるか…まぁ、兎に角俺の平穏の為に早くイザークのとこ行ってくれよ!んじゃな〜」

女々しさに囚われている私に目も呉れずその場を後にするディアッカにまた大きなため息がこぼれた

「女々しいか…」





その頃、イザークはアカデミー内を感情露に自らの愛する女を探し回っていた

「おい、貴様!はどこだ?」
「今、今日はまだ見てませんけど…」
「…っく!どこへ行った!アイツは!」

その圧倒的な気迫に押され、後ろへ一歩後ずさりながらも同級生と思しき女の瞳はイザークの容姿にに見惚れていた

「あ、あの…ジュール様………」
「あ?なんだ!!」

彼女の渾身の力を搾り出した問いかけ

みたいな普通の子の…いえ、ジュール様のような誇り高い方にはもっと……」

イザークの均整の取れた顔の眉間の皺がより深まる

「黙れ… 今度そんな口を利いたら殺すぞ」

吼えもせず、どこまでも冷静でどこまでも冷徹に紡がれたその言葉と殺気に満ちた気迫に周囲は凍りついた



って子も少し可哀相な気が…」
「それは、日頃敵視されているアスランだからわかるってやつですか?」
「そ、そんなわけじゃ…」

人懐っこい笑顔に悪戯の色をのせるニコルにアスランはいつもかなわない
ただポカンと向けた目の先には、胸まで伸びた髪をその白い指先でクルクルといじながらがこちらへ歩いてくるのが見えた

・・・」

ぽつりと呟いたアスランの声にイザークはキッと目の端を吊り上げた
自分以外の男が、しかもアスランが""と呼び捨てにするのが気に入らないのだ
しかも、先ほどから探し回っていたにもかかわらず、アスランが先にを見つけたことも拍車をかけていた

!どこに行っていた!!」

イザークの私に向けられた刃物みたいな鋭い視線
でも、どこまで暖かく私の全てを包み込む
私はこの時までその真の意味に気づいていなかった

「ごめ…んなさい……」
「なぜ謝る?そんな顔をするな…」

ニコルもアスランもイザーク同様に疑問に思っていた
イザークに溺愛されているのに、時折浮かべるその苦しそうな笑顔の意味を…

「だって、その子が言ってる事正しいと思うから…イザークにはもっと…」

アイスブルーの瞳に映る私はどこまでも平凡で、そこに映る事さえおこがましく思える

…貴様本気で言っているのか?」

また怒らせた…そんなつもりないのに……
イザークにこんな余裕のない辛辣な表情をさせているのが自分である事がまた辛い
だけど、一度訊かないと これ以上先に進めない
言葉にしないでこのまま傍にいるのは…地獄だ

「だって、そうでしょ?アスランだってニコルだってそう思うでしょ?」
「それは、まわりに流されすぎだ…俺はそんな事思ってない」
「僕もそんな思った事ないですよ」

思いもよらない問いかけに、アスランもニコルも穏やかにゆっくりと私を癒すように答えてくれた
そして、イザークは俯く私の顔に手をかけ、二人よりも甘く切なく囁く

「俺がお前を苦しめていたのか?何よりも大切にしていたつもりで…」

違う…
いつも私の名を呼び、片時も離なさないで居てくれる事がどんなに嬉しかったか
憧れて…好きで…大好きで…
イザーク、貴方は気高く、あまりに綺麗すぎて、眩しい
手の届かない存在だと思っていたから…

「俺はお前の事になると見境が付かない。俺がどれだけお前を想っているのか見せてやれたらいいのにな…」
「イザーク…」

傲慢で高潔で激情的な性格なイザークとは思えないほど、儚く切ない想いが私を強く抱きしめる腕から伝わる
こういう気持ち…なんていうんだろう……

「俺といるのが苦しいだけなら、そう言え。消えてやるから」
「違う!苦しくなんか…ずっと、イザークの傍にいたい!!」

嫌だ…
イザークが消えるなんて…
そんな事になるなら死んだほうがマシだ……

「なら、二度とくだらん事お前も言うな。俺が選んだ女というだけでは十分だと思えないなら俺の傍から離れるな。くだらない事をその耳が聞くなら俺がその耳を塞いでやる。その透き通るように綺麗な声でくだらない事を言いたくなったらその唇を俺が塞いでやる。そのガラスのように脆い心が痛むなら誰よりも優しく包んでやるから、だから俺の傍を離れるな」

きっと、はじめからずっとそう思ってくれていたんだ
逃げることさえ許されない脅迫にも似た冷徹な瞳の奥で
ずっと私の事を…

「う、うん。傍に居る…ずっとずっと……イザークの傍に………」




瞳を濡らすものなんて
見なくていいんだよ
この手で… 目隠ししてあげるから
 
胸を塞ぐものなんて
聞かなくていいんだよ
好きな歌… 歌ってあげるから
 
それでも涙が零れたら
どうしても溜息が漏れるのなら
 
こっちを向いてごらん
… KISSして あげるから …





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この作品は雀達様キリ番リクエストにお応えしたものです

・お相手は強気のイザーク
・ヒロインの容姿が美麗すぎると気後れするので標準であること
・透明で美しい声の持ち主
・男勝りな精神を持っているにもかかわらず、脆いとイザークに思われている事
・ハッピーエンド

ヒロインの設定は以上以外にも雀達様とのやり取りで細かく設定されました
雀達様が思い描いた夢に少しでも近く描けているでしょうか?
今後も当サイト共々宜しくお願いします。


読者様のリクエストにお応えするのはとても難しい執筆ですがとても楽しいです
自分では思い付かない設定やストーリーはいつでも刺激的
気後れせずに、気軽にリクエストお寄せくださいませ

雀達様はじめ、日頃ご愛読していただいてる皆様有難うございます!
この場をお借りして御礼申し上げます


//Al Sa'd al Su'ud//Master;神威