* 依存




振り下ろしたナイフで胸を貫けば、溢れ出る鮮血で白い肌が真っ赤に染まる。
血の化粧を纏う貴方はとても綺麗で、愛おしさすら感じる。
冷たくなっていく貴方の身体を抱きしめる。


これで、ずっと一緒に居られるね…。

誰にも渡さない。貴方は私だけのもの。

貴方を誰よりも愛してる…。

たとえ腐敗した屍になったとしても、貴方を愛するから…。

だから…

お願いだから、私だけを愛して――。






眠りに沈んでいた意識が緩々と浮上する。身体に触れる何者かの手に気付いて目を開ければ、視界に愛しい人の姿が浮かぶ。

「起きたのか…?」

見下ろしてくる綺麗な蒼い瞳。髪を撫でる手は酷く優しくて。身体を起こして甘えるように広い胸に顔を埋めれば、優しく頭を撫でられる。
その心地良さに背筋が震える。神威はゆっくりと顔を上げると、ラウの首に腕を絡ませ唇を重ねる。

「…ねえ…」
「何だね…?」
「……ラウは、私が死んでも…愛してくれる…?ずっと一緒に居てくれる?」

唐突な問い掛けに、ラウは眉を寄せながらも小さく笑う。

「たとえ君が死んだとしても、君への思いは変わらないよ…」
「…本当に?」

どこか不安げな瞳でラウを見つめる。
死後の事を考えるなんて馬鹿げているかもしれない。けれど、あんな夢を見てしまうほどラウを愛して狂ってしまったから…。
ラウが自分から離れてしまった時の事を考えると、不安で心がさざめく。
そんな心情を知ってか知らずか、ラウは宥めるように神威の背中を撫でる。

「…神威、私は何処にも行かないよ。だから…今は目の前にいる私だけを見ていればいい…」

そっと落とされる唇。耳元で囁かれる優しい声、身体を包む温もりに、胸が切なく締め付けられる。
ラウの腕に抱かれて愛されることほど幸せなことはない…。
神威はラウの肩口に顔を埋めると、首筋をきつく吸い上げて紅い痕を刻む。自分のものだと主張するように。
胸元に唇を滑らせつつ、指先でしっとりとした白い肌をゆっくりと辿りながら下肢に手をおろすと、手のひらに感じる熱をそっと包み込む。

「……っ、神威…?」
「…ラウが、欲しいの。だから、ちょうだい…?」

さながら娼婦のように妖艶な笑みを浮かべながら甘く囁く神威。唇を重ねて自ら舌を差し入れると貪るように熱い口内を蹂躙する。
その誘うような仕草にラウはふっと笑みを湛えて目を細めると、神威の唇に指先で触れて行為の先を促す。
神威はゆっくりとラウから離れて脚の間に身体を滑り込ませると、手のひらの中のものを口内に導く。
熱いそれに舌を這わせて唾液を絡ませると、湿った音を立てながら唇で扱いていく。
口と両手で丁寧に愛撫を施しながらラウを見上げれば、感じているのかラインの綺麗な眉を僅かに顰めて息を詰める。
その仕草がそそられるほどに綺麗で、身体の奥が熱を持ち始めて下肢が熱い疼きを覚える。

「んン…っ、ふ……」

早くラウを受け入れたいという衝動に駆られ、ラウを昇りつめさせようと彼自身への愛撫を激しいものへと変える。
蜜の零れる先端を舌で擽りながら指で激しく扱けば、ラウは神威の髪に指を絡ませながら顎に手を掛け顔を上げさせる。

「…神威…、もう……」

熱を孕んだラウの声に応えるように激しく先端を吸い上げると、彼自身が大きく震えて喉奥に欲を吐き出される。

それを躊躇する事無く飲み込めば、ラウは愛しげに神威を膝上に抱き寄せる。

「…気持ち良かった?」
「ああ…最高だったよ。だから、今度は君が…」

言葉と共に重ねられる唇。深く口づけを交わしていれば、いつしか彼自身は再び質量を取り戻し、神威は腰を落としてラウを受け入れる。
待ち望んでいた熱を感じて神威の身体と心は歓喜に震え、身体を揺らす度に甘い疼きが全身を駆け抜ける。
ラウの全ては私のもの。だから、もっと感じさせて……
そう耳元で囁きながら、神威は淫蕩な表情を浮かべて自らラウの腰に足を絡ませる。

「淫らだな…」
「私がこんな風になったのは…ラウのせい…。だから、もっと抱いて。壊れるくらい…」
「…君が望むのなら、いくらでも…」

ふっと笑いながら告げられたのと同時に激しく身体の奥を突き上げられ、神威はラウの背中に腕を回して強く抱きしめる。
ラウになら壊されても構わない。彼を感じ、彼と繋がっていられるのなら…。
白く塗りつぶされていく意識の中、そんな事を思いながらゆっくりと瞳を閉じた。
激しい情事後、ラウは事切れたように眠りについた神威を抱き寄せ腕の中に閉じ込める。そっと神威の髪に手をやると、起こさぬよう細心の注意を払いながら優しく梳く。

「……捕らえた君を離すわけがないだろう?」

ポツリと零れ落ちる言葉。その綺麗な唇には歪んだ笑みを浮かべて…。


君が望む事ならばどんな望みも叶えるし、どんな言葉でも与える。
君が私を狂おしいほど愛してくれるのと同様に、私も君を狂おしいほど愛しているのだよ…?
そう、殺してしまいたいほどに…。

「神威…」

君の全ては私のもの…。
誰にも穢させはしない。君を穢して良いのは私だけだ。
たとえ君が朽ちた屍になろうとも、君を愛し続けてあげるよ。
そして、私が逝く時は…



――君を私の手で殺してあげよう…。






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『 Tears of Relief 』華南様より