* 戦士の休息



灼熱の太陽が降り注ぎ、どこまでも青い海は空よりも青く輝く
じっと見ていると吸い込まれそうな青い海は美しく静かだ
しかし、一刻も休むことなく静かに変化し続けている

「気持ちいぃーー」

誤魔化しの利かない水着で海の中で肌を露にし、伸びやかな肢体を見せるその姿に乗り合わせた兵士全員が唾飲み込み、歓声をあげる
少女は兵士達を弄ぶように過激に髪をかき上げ、水飛沫を宝石のようにその顔に纏う

「なんなんだ、あの女は…」
「いいじゃないの、ここにもう2日だぜ?補給まで受けちゃってさ。このぐらい刺激的な事ないとな」
「ふん!貴様は女の事しか頭にないのか!」

男の欲望を露にするディアッカに対し、海を照らす日差しとは対照的な冷徹を装うイザークは人魚のように泳ぐ少女の姿を正視できずにいた

「人魚みたいですね、彼女」
「そうだな・・・」

人懐っこく優しい笑顔で少女に手を降るニコルのとなりで、アスランは片足に肘を突き眩しいその姿に目を細めた

「そんな暑苦しい格好してないで、皆も入ればーー?気持ちいいよぉー♪」
「貴様!なに悠長のな事かましてるんだ!遊びじゃないんだぞ」
「ザラ隊なんて遠足の延長じゃないのぉーー?」
「僕も泳ごうかなー♪」
「あ、俺も!!」

プラントのように管理された気候とは違い、皆暑さで上着を肩に羽織っているだけだった
ニコルとディアッカは、躊躇いもなく服を脱ぎ捨て、制服を着ている時の細い身体つきからは想像も付かないような鍛え上げた逞しい身体を露に海に飛び込み、少女と戯れ始めた
アスランは腕を組み険しく眉間を寄せているイザークを涼やかに見上げた

「な、なんだ…その目は!!」(俺は入らんぞ…)
「いや、なんでもないさ…」(俺も入ろうかな…)

よくわからない空気が二人の間に流れた
沈黙を破るように少女はアスランを海へと誘い出し、イザークは一人残され除け者にされた事に爆発寸前の鋭い視線をディアッカに突き刺した

「ま、まずくね?」
「ディアッカ半殺しでしょうね」
「素直じゃないからな、あいつ」

配属されて間もない少女には、彼らの心配の意図がまるっきりわからなかった
甲板でいつもよりも鋭い殺気を放つイザークを示しているという事実以外は

「ん?なんで?何が???」

無邪気にアスランの肌に巻きつく少女の肢体は、柔らかく吸い付いてきた
いくらそういうことに鈍感なアスランであっても、その顔をあっという間に紅潮させた

「俺も抱きつかれてーーーっな!!」

動揺し耳まで赤くし、身体を硬直させるアスランを羨ましげに天を仰いぐディアッカの首に、スルリと巻きつく白い腕と『どう?』と悪戯に覗き込む近すぎる程近くにある顔にそのまま唇を重ねてしまいたくなった

「ディアッカは手早いからダメですよ、離れてください!!」

ニコルは急ぎ二人の間に割って入り、少女を海から上がるよう促した
肩を竦めながら、上がってきた少女の頭にふわりと白く洗い立ての香りのするタオルが投げられた

「ありがとう♪」

天真爛漫な少女の笑顔はイザークの精悍な顔を一瞬崩した
少女の細い指がプラチナ色の髪を撫でその中に潜らせ、アイスブルーの瞳を覗きこんだ

「誘っているのか?」

無言のままの少女に視線を絡ませ、赤い果実のように艶やかな唇にゆっくりとイザークは視線を落とした
しかし、それと同時に少女は鮮やかな手つきで見事に切り揃えられた前髪を額の上で結い上げてしまった

「うん、精悍で美麗な顔だけど、こうすると可愛いよ♪」
「…ふ…ふざけるな……貴様ぁぁぁぁ!!」

甲板で起きた奇妙な光景に水上の三人は唖然としたが腹を抱えて、心から笑った
天真爛漫な笑い声をあげながら、魅惑の姿で追い掛け回される少女と幼児のような可愛い髪形で眉間を寄せ怒り心頭なイザークだったが、彼もまたそれを楽しんでいるようだった


それは、戦火に身を置く軍人である事を忘れた夏の日の出来事だった



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//Al Sa'd al Su'ud//Master;神威