*不確定な時の先で




「なんでお前が………」


眠り続ける少女の手を強く握り締め、イザーク・ジュールは虚空に惨劇を思い出していた
ストライクが振り下ろしたビームサーベルが少女の乗る機体を貫いた瞬間を
生命維持装置により辛うじてその命を繋ぎとめている
が、しかし………この状況を生きていると果たして言えるのだろうか?
戦死報告を受けるよりも、MIAを受けるよりも残酷なのかもしれない


楽にしてやりたい… 楽になりたい…


悲痛な表情で伸ばした手の先には、小さなボタンがひとつ
迷う指先は震えている


「やめろ!イザーク!!」
「何をしようとしてるんですか?!イザーク!」
「そんなことしても余計、辛くなるだけだぞ」

「う、うるさい!!」


イザークは腕を掴む褐色の手を振り払い、抱えきれない苦悩を背に病室を飛び出した


「ディアッカ、イザークを追ってください。僕たちはここで待ってますから」
「俺?やれやれ・・・だぜ」









降り止まない雨がイザークの全身を濡らす
それはまるで、彼の怒りや悲しみを洗い流そうとしているかのように
天を仰いだ顔から流れ落ちる雨は、イザークの頬を流れる涙を隠していた


「なぁ、ディアッカ。俺はどうしたらいい?」


初めて見るイザークの弱さ
苦悩するその姿に近づくことも、答えてやることも出来なかった


「あいつはいつも俺に笑ってくれて、好きだと言ってくれて…なのに、俺は…俺ときたら……まだ何もしてやってないのに、まだ何も伝えてないのに……もう、してやれる事は何もないのか?ただ、いつまでも待ってるしか………」

「それで十分あいつは幸せだと思うぜ?  あ、そうだ。昔 あいつに安物の指輪買ってやったろ?」

「ん?………そんなこと、あったか………」

「ちゃんとしたの買ってやれよ。アレ、すっげー嬉しそうに大事にしてるの見たぜ。周りに安物って言われようとイザークに買ってもらったモノだから関係ないって言い張ってさ」


初めてあいつと出かけた時に雑貨屋で売っていた安物の指輪を買ってやったっけ
そんなことも俺はすっかり忘れていたよ
お前の愛に俺はすっかり胡坐をかいて、こんなにも傲慢で俺は今までいったい何をしていたんだろうか
苦しいからといって、辛いからといって、愛する者の未来をこの手で閉ざそうとするなんて…


「あぁ、そうだな。他の女が羨む様な特別なモノを作らせるか…」

「安物の次は最高級ってか?極端なところがイザークらしいな」





なぁ、
こんな時にかける言葉は、どれもこれも虚しい
だけれど、癒してやれるのも また言葉しかないんだよな

こんなにも脆弱で辛辣なイザークを知っているか?
目覚めるまでに代わって俺らはイザークを支えていくつもりだ
だけれど、あのイザーク相手だ
いつまでも、代わりをしていたら身も心も持ちそうにない
第一、イザークに大して友情は持っていても、程の愛情ないからな

だから、俺らの為にも早く目覚めてくれよ






口をつぐんで 瞳を閉じて どんな夢を見ている?

枯れてしまった声を 消えてしまった笑顔を


もう一度…









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お久しぶりです
ディアッカが大活躍?の巻きでした。ニコルとどっちにしようかと悩んだのですが…
強気で傲慢なイザーク王子にお灸を据える的なお話で、ちょっぴり切ないモノに仕上がりました
失って初めて気付く大切さ。をイザ王子にも味わって頂こうって思ったのが切欠。
皆様の胸をキュンと出来たら嬉しく想います。


いつもありがとうございます


//Al Sa'd al Su'ud// Master 神威   2009.7.20