* 09[繋げられた全てのモノ]




頭上にも、そして横にも紺色の限りなく黒に近づけたような背景のもとに輝く無数の星
上にも下にも横にも全て
輝く光の粒子に囲まれていた
金銀の砂子を巻いた中に輝きだした小さな星たち


『私はね、自分にあった静かな余生をあの人と送りたいの』

"信じています、貴方達の描く未来を"と言いいアスランをエターナルへ導いてくれた医師の伝言

余生

その言葉が未来を託された彼らの胸を打った
見せる表情は困ったような当惑したようなものだった
アスランは言葉を切りため息を一つ吐くと続けた

「全てを終わらせる鍵はもうすぐ扉を開ける。此処から先は決して気を緩めてはなりません。手遅れにならないように…どうぞ、その先に待っているものが私達の想い描く未来であると祈っています。と…俺にはこの戦いは終局を迎えるという事と聞こえたけど…」
「んー、全てを終わらせる鍵ね…なんのことだろうね?ダコスタ何か聞いてこなかったのかー?」
「え?そんな事聞いてる余裕なかったですよ…」

を一番良く知るバルトフェルドの言葉を皆が固唾飲んで待つ

「はぁ、やっぱりの代わりは勤まらんなぁ…まぁ、あいつの事だ全てを計算し尽くし手は打ってると思うが」
「そういえば、そのさんって人が余生を送りたいって言う人ってどんな人なんですか?」

口の上手い陽気なバルトフェルドの顔が一瞬曇った
此処に居る全員が知っているはずのその人物。しかし、どこまで教えるべきものか…

「誰でも一目見て何か不快で恐ろしいものを覚えるそんな奴さ」
「ここまで夢を繋いでくれた様が希望する余生を送る為にも、私達と同じ未来を描いている方たちの為にもやらねばなりませんわね」




時を同じくしてを乗せたヴェサリウスでは強襲されたエターナルの進路を割り出していた
その進路を見つめながら、以前自分の撒いて置いた種がこんなにも大きく育った事、方向さえ誤らなければ大きく花咲く日も近いとの心は感じていた

本来ならば全てを疑った上で、冷静に、冷酷な手を打つべきだった
しかし、は彼らを信じる方を選んだ
青臭い、見たかによっては実に愚かなやり方だ
たとえ、間に合わない結果となっても恨みはしない
ただ、イザークのことが心配だった
イザークの心はどれほど傷つくだろうか…

「イザーク!今度出会えばアスランは敵だぞ?」
「・・・」
「討てるかな?」

白く輝く白眼の中央にある真っ直ぐで雄弁なアイスブルーの瞳が揺れた

「…無論です!裏切り者など!」

その言葉にわかっていてもの胸は痛んだ
いくつかの原因を作ってしまったのは私だという事を自覚している
イザークさえも私達のゲームに巻き込んでいるという事も・・・



隊長室にもどったクルーゼはフレイを傍らにを痛まし気に見つめていた

「愚かなことを…それはただの夢、今の世では実現など不可能だよ」
「一人の力では実現できるなどと思うほど、私は甘くもないし愚かでもないわ。ただ、私の駒は私が動かさなくても、私の意思を継いで動いてくれる。私は種を撒く土壌を用意し撒けただけで満足よ。それにその種はもうすぐ芽を出すわ」

何も知らないフレイには霧のかかったような会話
人目を憚らず時に激しく愛し合う二人なのに、交わす会話は敵同士のよう
もクルーゼも外見や行動とは裏腹に実は不屈な人間ななのではないかと思った
それともコーディネーターとはこういうものなのかと…

「今更芽を出したところで咲く事など出来はしない。その芽を摘むのもまた人だ」
「摘まれてしまったら、また種を撒けばいいだけの事よ。撒くのもまた人よ」

優しく穏やかな視線でフレイに微笑みかけた
ザフトに連れてこられた時は悲痛で憎しみに満ち溢れていたフレイの心が、優しい色の綺麗な花を咲かせる種を育てるまでに変化した事に気づいていた

「そんなことをしても、もう遅いさ。幕は上がっているのだからな」
「…それでも、最後は私が勝つわ」

ほろ苦く笑いながらもクルーゼは、の血を思わせる瞳の強い輝きに吸い込まれるようにそっと唇を重ねた




『何を仰ってるんですか皆さん、この期に及んで。撃たなきゃ勝てないでしょうがこの戦争。敵はコーディネーターなんですよ?』
『青き清浄なる世界の為に!』

『思い知るがいいナチュラル共。この一撃が我等コーディネーターの創世の光と成らんことを!!』
『ザフトの為に!』

地球軍は核を、ザフト軍はジェネシスを放つ
それは果て無き涙と憎しみを生み、その渦はこの世界を飲み込みクルーゼの描く未来へと続いていく・・・
そして、クルーゼもまたその身を渦の中へ投じ、ゲームの総仕上げに花を添えた
黒く憎しみ色の花を・・・

もはや止める術はなかった
地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となる…はずだった

『宙域のザフト全軍、ならびに地球軍に告げます。
現在プラントは地球軍、およびプラント理事国家との停戦協議に向け、準備を始めています。それに伴い、プラント臨時最高評議会は現宙域に於ける全ての戦闘行為の停止を地球軍に申し入れます。』


それは人を信じ、撒き続けた種が芽を出し、小さな優しい花の蕾を持った瞬間だった


しかし、の支払った代償は大きかった
幾粒もの青と白のカプセルと、紅い涙が虚空に舞い散る
悲しい戦いの残骸と声にならない悲鳴と共に


ヤキンを生き抜いた数少ない者として賞賛を受けイザーク・ジュールはプラントに帰還したが、母エザリアは捉えられ、そしてもまた捉えられていた

イザークが目にしたは廃人同然で、嘗ての気高く神々しい姿が嘘のようだった
少なくともイザークにはそう見えた
の心の内で吹き荒ぶ冷たい風を感じ取った

孤独

これからずっと耐えていく魂の隙間風
は虚無に陥ってしまったのではないかとそればかりが心配だった
イザークはの前に立つとその身体をそっと抱いた
温かかった
しばらく、もうしばらくその温かさに身を委ねていたかったが、そんなことをしたら・・・

「最後までありがとう」
「俺に出来る事はこれぐらいしか・・・」
「窮地に立たされると人は様々な事に気が付くでしょ?」

イザークは自分を見上げているの瞳から目を離さずに次の言葉を待った
その瞳にはの全てが現れていた

「本来見えていなかった事、忘れていた事…イザーク、貴方にもそれが見えたのでしょう?あの悲しいだけの戦いの中で」

は毅然としかし静かに言う

「さようなら、イザーク・ジュール」
「さようなら、

イザークは静かに微かに苦笑し、身を引いた
柔らかい髪やうなじから、微かに甘い香りがしている
懐かしい、愛しい香り
この香りに接する事はもう二度とない

イザークは移り香に誘われ一度だけ振り返った
振り返った先に目にしたものは・・・





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予告通り一気に加速!
でも、これで終わりじゃないのよぉ〜〜ん

イザークは愛しいの為に何が出来たのか?
涼やかなアイスブルーの瞳に映ったモノとは?
次回最終章にご期待あれ


戯言:ダコスタみたいなアシ欲しい…